最近映画やドラマでよく聞く『ジャック』という名前。ジャック・バウアー、ジャック・シェパード、ジャック・スパロウ…。現実の世界でもジャック・ニコルソンにジャック・レモンにジャック・ロードに、昔からいろんなところでジャックの名前を聞くが、映画の世界で一昔の前によく聞いた「ジャック」と言えば、トム・クランシーのあのシリーズ…ジャック・ライアン三部作。『レッド・オクトーバーを追え』『パトリオット・ゲーム』『今そこにある危機』。気づけば、この三部作も公開されてから二十年近く経ってしまっているのですが、劇場にも観に行ったし、小説本も買ったし、テレビの吹き替え版もよく見たし、自分の中でもお気に入りの三作品であります。三作品を振り返り、少し紹介しておきますと、
『レッド・オクトーバーを追え』…祖国の体制に不満を持ったソ連北方艦隊潜水艦艦長のマルコ・ラミウスとその部下達は、最新潜水艦レッド・オクトーバーに乗り込み、アメリカに向かう。国家最高機密の漏出を阻止すべくソ連海軍は艦隊を総動員して、アメリカ東海岸へ向かった。CIAは、レッド・オクトーバーがアメリカへ亡命を図ろうとしている事を知り、ラミウスの真意を確認するため、CIAの情報分析アナリスト、ジャック・ライアンにその任務を与える。アメリカ海軍の原子力潜水艦ダラスに乗り込んだライアンは、レッド・オクトーバーを見つけ乗船し、ラミウスに亡命を手助けするための作戦を提案する。アメリカの偽装工作が成功し、ソ連艦隊は、レッド・オクトーバーが沈没したと思い込み、大西洋から去るが、ソ連潜水艦の艦長が偽装工作を見破り、攻撃を始めた…。
潜水艦ものの映画を見たのは、もしかしたらこの作品が初めてだったかもしれない(その後、『Uボート』や『クリムゾン・タイドにもハマったが〉。映画公開時は、まだ冷戦下だったが、その翌年(1991年)にソ連が崩壊し、世界情勢がめまぐるしく変化していた時代に作られた作品なので、よりリアルに映った。ソ連とアメリカを巡る対立を描いたアクション映画やドラマは、例えば007シリーズやエアーウルフなどたくさんあったが、この作品のような政治的な駆け引きを本格的に描いた作品は、初めてだったので、その緻密なストーリーの壮大さと終始漂う緊迫感に圧倒された。監督は、『ダイハード』を撮った直後のジョン・マクティアナンだったから、作品の面白さは、十分に保証されていた。この映画の主人公は、ショーン・コネリーが演じたラミウス艦長で、ジャック・ライアンは、ラミウスのサポート役的な立ち位置だったが、アレック・ボールドウィンが演じた若くて初々しいライアンも魅力的だった。
『パトリオット・ゲーム』…アイルランド共和国軍(IRA)のテロリストのリーダー、ケビン・オドンネルのグループが、イギリス王室のホームズ卿を襲撃するが、アメリカから家族を連れてロンドンへ観光に来ていたジャック・ライアンによって阻止される。ライアンに弟を殺されたIRAのメンバーの一人ショーンは、アメリカに戻ったライアンの家族を標的にし、ライアンの妻と子供に瀕死の重傷を負わせる。ジャックは、CIAの協力を得ながら、家族を狙ったショーンとテロリストの行方を追う。
この映画では、ジャック・ライアンとその家族を中心に描かれており、ライアンが初めて主人公として活躍する作品だった。『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』を経て、よりシブ味を増したハリソン・フォードがライアンを演じ、作品のアクション性を高めてくれた。本来は、前作でライアンを演じたアレック・ボールドウィンが引き続き、この作品でもライアンを演じるはずだったのだが、舞台に出演するため降板してしまったようだ。アレックは、ボンド役もハマりそうだなぁと当時は、アクション映画での活躍もほのかに期待をしたものだが、その後の出演作を見ると、色々ともったいない話である。
『今そこにある危機』…ベネット大統領の友人ハーディン一家が惨殺され、その犯人の2人がコロンビアの麻薬組織カリ・カルテルのメンバーであることが判明する。麻薬撲滅を公約に掲げてきた大統領は、「麻薬カルテルはアメリカにとり、今そこにある危機だ」と言い、ジャック・ライアンがハーディン事件の捜査に当たることに。ライアンは、ハーディンがカリ・カルテルの資金洗浄係であることを突き止め、彼がカルテルの資金を着服したために、カルテルを率いるエルネスト・エスコベドに殺害されたと推測。一方、エスコベドの部下で、かつてキューバで活動していたフェリックス・コルテズがアメリカに密入国し、恋仲であるFBI長官の秘書モイラと連絡を取り合い、アメリカ側の動きを探っていた。パナマに渡ったCIA作戦担当副長官のロバート・リターは、CIAの諜報員クラークに会い、秘密作戦の指揮を取るよう要請。クラークは、秘密部隊を率いて、コロンビアに潜入し、ライアンもそこへ向かった…。
前作に続きハリソン・フォードがジャック・ライアンを演じた作品だが、この作品で存在感を発揮していたのが、CIAの諜報員クラークを演じたウィレム・デフォー。ウィレム・デフォーと言えば、『プラトーン』の名演が未だに頭に焼き付いているが、一時期は、戦争もの映画の常連さんと言うイメージが強かった。戦争アクションものにしては、やや話が難解で人間関係も複雑であり、事前に小説を読んで予習しておかないとわかりづらい部分もあったが、クラークのカッコ良さは、大いに伝わる作品だ。
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