ドミニク・サンティーニを演じたアーネスト・ボーグナインが亡くなった。2ヶ月程前にこのブログに書きましたが(「CIAのドミニク」を参照)、最近もブルース・ウィリス主演の「RED(2010)」と言うアクション映画にCIAの記録保管員役で出演していて、とても元気そうなお姿を見かけたばかりだったので、また何かの作品でお見かけできるものと思っていたのですが、残念です。
ボーグナインを知るきっかけはやはり『超音速攻撃ヘリ・エアーウルフ』。日テレ水曜夜9時のゴールデンタイムに突如として現れた怪物番組にとても堅物で頑固そうな爺さんが出ているではないか。しかもエアーウルフのパイロットと言うからさらに驚いた。当時は、こういうアクションものなら、普通もっと若い奴がパイロット役をやるものだと言う固定観念みたいなものがあったのだが、よくよく考えてみると、ドミニクの世代は、第2次大戦を経験している世代。しかもドミニクを演じるボーグナイン自身もその時、海軍に所属していたと言うから、その経験がドラマの中で見事に活かされ、ドミニクと言うキャラをより魅力的にしていたのだと思う。
ドラマの中でドミニクは、若い奴らには負けないと言う戦争世代の力強さとか根強い気概を見せることが多かったが、実際、日本人も含めてリアルな戦争時代の世代の人もそういう気概を持った人が多かったと思う。シーズン1の「高速100kmの不時着!! 死のスタント飛行(ONE WAY EXPRESS)」では、急遽飛び込んできたヘリスタントの仕事のことでドミニクとホークが喧嘩をするシーンがあるが、年老いたドミニクに危険なスタントは止めさせようとするホークに対し、ドミニクは、自分の老いを頑なに認めようとせず仕事を強行しようとする。ドミニクのその意地っ張りな部分は、カッコ良いところでもあったし、やはり過酷で厳しい戦争時代を乗り越えた世代の本音を現していたのではないかと思います。
エアーウルフは、最初映画だと思っていたのだが、いきなり水曜の夜9時に始まり、テレビのミニシリーズなのかと思いきや、1987年4月から翌年の3月までびっしり一年間(10月からシーズン4に当たる「新エアーウルフ復讐編」がスタート)あの映画のようなクオリティのスカイアクションが毎週展開されていた。今では本当に考えられないくらいスケールのでかいドラマだったが、ドミニク役のボーグナインは、当時、70代目前と言う年齢でこのドラマに出演していた。そのことにおいてもまさに戦争世代の力強さと言うか、ボーグナイン自身のパワフルなアクター魂を感じる。
ボーグナインを追悼するために昨夜は、DVDでシーズン3初回の「99の顔を持つ大怪盗!!砂漠の秘密基地掃討戦(THE HORN TO PLENTY)」を見た。大怪盗ジョン・ブラッド・フォード・ホーンがホークを洗脳して、エアーウルフを奪おうとするエピソードですが、この話の冒頭でもドミニクは、歳のことでぼやいていた(笑)。しかも、洗脳されたホークがドミニクを銃で撃つと言う衝撃的な展開も見られる。この頃になるとドミニクはもちろんのこと、ケイトリンも普通にエアーウルフを操縦できるようになっているからシーズン1の時のようなホークとドミニクの激しい葛藤が見られなくなっているのが少しさびしい。ちなみに、ジョン・ブラッド・フォード・ホーンの声は、最近亡くなられた青野武さん。ホーンの娘アンジェリカ(一時期「ナイトライダー」マイケルナイト役のデビッド・ハッセルホフの奥さんだったキャサリン・ヒックランドが演じている)の声は、ナイトライダーのボニーの声でも御馴染みだった小山茉美さんだ。
少し横道にそれるが、ボーグナインの訃報のすぐ後に、必殺シリーズでおりくを演じた日本を代表する女優・山田五十鈴さんの訃報を聞いた。二人には、意外な接点がある。共に1917年生まれで、亡くなった年齢も同じ95歳。同時代を生きた日米の名優の不思議な運命のつながり。やはりまた一つの時代の風が通り過ぎていったのだと深々と身に染みながら、お二人のご冥福をお祈り致します。
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